概要
12月8~9日に表題の件が報道されました。
厚生労働省が12月8日に開いた労働政策審議会において、労災保険「特別加入」の制度にて『柔道整復師』を適用する対象拡大案が了承され、その報道が8日から9日にかけて新聞などで報じられました。
そもそも「労災保険」とは。
労災保険(労働者災害補償保険)とは、労働者が業務(仕事)または通勤によって、病気・ケガをしたり、死亡したときに保険給付を行う制度です。
「労働者」とは。
法律的には「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」(労働基準法第9条)とされています。
「使用される」とは、
・「指揮監督下の労働」であるかどうか
・支払われた報酬が「労働の対価」であるかどうか
の2点で総合的に判断されます。
「特別加入」とは。
労災保険は、労働者の業務災害又は通勤災害に対する保護を目的としているため、基本的には労働者に該当しない者には適用されません。
しかし、中小事業主・自営業者等には、業務の実態や災害の発生状況等からみて、労働者に準じて労災保険で保護するに値する者も存在する、と言う考え方から、労災保険に「特別加入」制度が設けられた経緯があります。
今回、その「保護するに値する者」の中に柔道整復師が加わることとなりました。
どんな柔道整復師が対象となるか。
端的に言えば「施術所に関することを1人で行っている柔道整復師」となります。施術はもちろん、窓口負担の領収なども柔道整復師本人が行っている場合が当てはまります。
誰かを雇っている場合、もしくは雇われている場合には今回の「特別加入」には当てはまりません。また、法人化している場合も今回の「特別加入」には当てはまらないものと思われます。
ただし、夫である柔道整復師が、妻を受付業務にパートと言う形で就いている場合は、包括的に「特別加入」制度に加入することは可能になるかも知れません。
支払うべき保険料
保険料と保険料率について
年間の保険料は、式で表すと、
保険料算定基礎額(B)〈=給付基礎日額(A)×365〉にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものになります。(A、Bは下の表内とリンクしています。)
では、その「給付基礎日額」とは何か、ということになりますが、これは『保険給付の額を算定する基礎となるもの』であり、「給付基礎日額」が高ければ、補償内容も高くなりますが、保険料もその分高くなります。
しかし、補償を手厚くしたいから支払う保険料を高く出来るかというとそうではなく、通常は現在の所得水準に見合った額を選択することになります。
例えば、月の施術所の収入が30万円であれば、給付基礎日額は1万円と考えます。この場合、下表より年間の保険料は10,950円となります。
支払先(手続き先)はどこか
「公益社団法人日本柔道整復師会」が特別加入団体の担い手として検討されています。
資料より、社団の本部は東京都台東区に位置し、東京都外に施術所がある場合でも、保険料の支払については、各都道府県ではなく、東京(本部)にて一括管理されるでしょう。
また、社団の会員のみならず、任意団体加入者や所属団体なしの個人請求をしている柔道整復師も加入対象になると思われます。
補償の内容はどうなるか
柔道整復師が労災の特別加入をした場合で使われる保険給付は主に2つあります。
療養に関する給付
傷病について、病院等で治療する場合の治療費が給付されます。お金がもらえるのではなく、労災病院または労災指定病院等において必要な治療が無料で受けられるという内容です。
支払っている保険料の大小に関わらず、必要な治療が無料で受けられます。
休業に関する給付
傷病の療養のため労働することができない日が4日以上となった場合、休業4日目以降、休業1日につき「給付基礎日額」の80%相当額が支給されます。
通勤災害について
特別加入制度の業種の中には一部、通勤災害に関する補償がないものもあります(個人タクシー業者、個人貨物運送業者等)。
ただ、柔道整復師と言う業種に関しては、自宅等の住居と就業場所(施術所)との間の往復の実態が明らかであることが多いため、通勤災害も適用されるのではないでしょうか。
いつから補償となるか
基本は年度(4月1日から翌年3月31日)で年間保険料を支払う形になりますので、4月1日から実施されるのが理想と思います。中途加入もおそらく可能で、その場合は月割りでの保険料支払となるでしょう。
さかのぼっての加入は不可です。特に中途加入の場合は、申込日(もしくは保険料支払日)の翌日が保険適用の開始日になると思われます。
申込日から保険対象とならないのは、例えば、当日午前中に業務上で負傷し、その日の午後に申込&保険料支払をすれば保険適用となってしまうおそれがあるからです。
確実に補償される(保険の対象となる)のか
給付請求書を作成・送付した場合でも保険がおりない(一部不支給など)可能性があります。支給決定は労働基準監督署(国)が行います。(よく労災認定か否かの裁判があったというニュースをやっていますね。)
保険給付されることが原則、前提ではありますが、例外もあるということは頭の片隅に置いておくと良いかと思います。
その他資料等のリンク
・ 労災保険における特別加入制度の見直しについて(厚生労働省より)
・ 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)(厚生労働省より)
まとめ
現在の報道と、それにかかる現在の法的解釈から説明をさせていただきました。細かな運用部分はこれから決まっていき周知されていくものと思われますので、今回説明した内容とは差異が出てくる場合もあります。柔道整復師に向けた労災特別加入のリーフレットも作られると思いますので、興味のある方はリーフレットが出来次第、ご一読することをお勧めします。
【追記】4月1日から、柔道整復師の労災保険特別加入が可能となりました。この件についてのブログを書きましたので、よろしければご覧ください。
保険料の他、別途、保険料取りまとめ団体への入会金や組合費が必要になる可能性があります。