患者に「失業保険(基本手当)をすぐもらいたいから証明書を書いて」と依頼された場合

柔道整復
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接骨院の先生からタイトルのような依頼について質問がありました。

 私のもとに、柔道整復師の方から下記のような内容の話をいただきました。

「時折来られる患者さんから、腰の調子が良くなく、現在の仕事を続けることが難しいので辞めようと思う。ハローワークに相談に行ったら、失業等給付の基本手当を受給するにあたり、自己都合での離職では、待期期間(7日間)の満了後1か月以上2か月以内の給付制限がかかるが、心身の障害・疾病・負傷等により離職(特定理由離職者)と判断された場合は給付制限を受けなくて済むとのことで、その証明書を柔道整復師に書いてもらうことが出来る、とハローワークの担当者から聞いたので書いてもらえますか。」

 と言う内容でした。

自己都合退職の場合の【給付制限期間】は2020年10月からの改正で、3か月→2か月へと変更になりました。

 証明書とは何なのか、また柔道整復師が記載できるのか。私も調査するまでは知りませんでした。
雇用保険→社労士として、また、接骨院に来られる患者経由で柔道整復師からの依頼→協会事務長として、といろいろ今の業務にマッチしたので、ハローワークまで聞きに行きました。

結論から・・・

証明書はハローワーク規定のものが存在します。

それがこちら。

 ちゃんと注釈(※印)のところに、「柔道整復師」と記されています。(その上は「担当医師名」となっていますが、特段、医師名(←このようにして)柔道整復師名とする必要もないとのことです。
 この【就労可能等証明書】を失業給付(基本手当)を受けたい患者が持ってこられたら、用紙上半分に必要事項を記入することになります。
 柔道整復師業界で用いられている「施術証明書(施療証明書)」は今回のケースでは使用不可であることがわかりました。

記載事項に関する注意点・1

【就労可能等証明書】に必要事項を記入する際、『就労上の指導・アドバイス等』と『就労の可否』については、〇で囲んであるとおり、両方とも1に〇がされていないといけません。
 『就労上の指導・アドバイス等』として、「今の仕事(ハローワークに行ってる段階では前職)については今の体調を考えると退職した方が良いね。」として1番。また、『就労の可否』についても、「ただ、別の仕事(今回の相談のケースで言えば、そこまで腰に負担のかからない仕事)であれば、休業しないで、週20時間は働けると思うよ。(ドクターストップ・・・ではなく、”柔整師ストップ”をかけてるわけじゃないよ。)」と判断したうえで、1番に〇を付ける必要があります。

患者から1番に〇を付けて、と言われたから付ける。とか、患者に協力したい意思のみで、柔道整復師の判断とは別に1番に〇を付けることを意味しているわけではないので、その点ご留意ください。

そもそも「基本手当」とは

 雇用保険の被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職し、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職していただくために支給されるものです。
 そのため、週20時間働くことそのものが困難と診察担当者(医師・歯科医師・柔道整復師)が判断した場合は、そもそも新しい仕事を探す以前に治療に専念(優先)すべきものと考え、「基本手当」を受給する資格者ではないですよ。と言う意味になります。その場合は、傷病手当を支給するための手続きに入るか、受給期間の延長申請をするかどちらかを選択することになります。

傷病による就職不能として、30日以上職につけない場合、傷病手当支給か受給期間の延長申請かの選択となりますが、このブログは「柔道整復師」のカテゴリとして記載していて、選択うんぬんの話は雇用保険の解説となってしまいますのでここでは割愛します。

記載事項に関する注意点・2

 もう1点、記載する内容として注意するべき箇所が、『就労の可否』欄のかっこ内、
『 年 月 日より就労可 ※証明日以前の日であること』
と言う項目です。
 これは、上記”そもそも「基本手当」とは”の部分に繋がるのですが、記載する年月日は、患者がハローワークに基本手当を受給しようと申請する以前の日になっていないといけません。
 例えば、患者がハローワークに、記入済の「就労可能等証明書」を持って行った日が4月1日であれば、”〇年4月1日より就労可”となっていないと給付制限期間を受けずに基本手当を受給することが出来なくなります(逆に言うと”給付制限期間→今は2か月以内”を過ぎれば受給は可能です)。
 「申請した時には働ける状態にありますよ。」となっていれば良いので、もちろん”3月20日”とか、4月1日以前のものになっていればOKです。(逆に4月15日とか4月1日より後の日にちが書かれていればNGになります。要は申請日より前の日付記載されている必要があります。)

記載はしたけど「特定理由離職者」と認められない可能性はあるのか。

 特定理由離職者の該当/非該当の判断は、公共職業安定所長が行うこととなっています。念のため、ハローワークに非該当となるケース(可能性)を聞きましたが、柔道整復師により、上記事項に関する注意点さえ守って記載できていれば、ほぼ特定理由離職者として該当するとのことでした。
 また仮に非該当となった場合でも柔道整復師に責任が及ぶことはありません。

「就労可能等証明書」記載にかかる料金について

 患者から徴収可能です。私がハローワークを訪ねた際は、医師(病院)の記入で\5,000ほど取るところがあると伺いました。

そのため、診察の際は、患者として「まだ働くことそのものが辛い」と言って、就労可能等証明書を作成してもらうと、特定理由離職者非該当の書面を、わざわざお金を払って作ってもらうことになるのでその点は注意してください。とのことでした。

 改めてネット検索で「ハローワーク 就労可能証明書 料金」としてみると、とある総合病院(東京都)で¥3,300となっているところがありました。相場は¥3,000~¥4,000といったところでしょうか。

 今回この記事を読んでいただいている柔道整復師の皆様には、これを機会に院として文書料・証明書料を決めておくのも良いかもしれません。

補足

「就労可能等証明書」は失業した方がハローワークに相談・申請をしに行った際にもらえる用紙のため、ハローワークのホームページ内に原本をダウンロード出来るようにはなってないですと私が話を伺った時の担当者はおっしゃっていました(全国どこかのハローワークにはもしかしたらあるのかも知れませんが。。。)。
 写メなら良いですよ。と許可をもらいましたので、その写メを当ブログに載せています。ハローワーク阿倍野の担当者様ありがとうございます。

まとめ

・ 給付制限期間なく失業後の基本手当を受給するために「就労可能等証明書」と言う柔道整復師が記載できる書面が存在する(柔道整復師が用意するわけではなく、失業された患者が持参してくる)。
・ 記入内容として「特定理由離職者」該当となるためには、記載誤りがないように注意(柔道整復師として逸脱した内容(虚偽など)を記載することは推奨していません。)
・ 文書料(証明書料)の相場としてはネット検索によると¥3,000~¥4,000あたり

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