第53回 社労士試験 選択式解いてみた(労安・労災・雇用)

社労士試験
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【問1】労働基準法・労働安全衛生法

解説

 前年と問題構成は似ていました。「A」が労働基準法から、「B」「C」が最高裁判例から、「D」「E」が安衛法で、1つがマイナーな安衛則からの出題でした。
 前年は暗記しておいてその場で解ける肢が2つ(「A」の工事着手14日前まで、と「D」の6月)ありましたが、今回は即座に埋められる肢は強いて言えば「B」の判例部分からでしょうか。
 構成は前年度からの引継ぎと言えますが、解答を導くためのレベルは高くなったと言えます。

各肢の解き方

「A」は【賠償予定の禁止】からの出題でした。根拠は労働基準法16条からですが、条文を穴埋めするのではなく、テキストなどの解説文に、正解肢となる「⑱・身元保証人」と書かれているのではないかと思います。
 条文の丸暗記ではなく、趣旨を理解していれば、〇親等内の親族(血族)や、配偶者に限定するものではないと読み取れます。

「B」「C」は【国際自動車事件】と言う最高裁判例からの出題で、論点は【割増賃金】からでした。
 労働基準法37条や労働基準法施行規則19条に記載されており、また文中に”~に相当する部分の金額を基礎として”とあるので『【割増賃金】の計算の基礎となる賃金=通常の労働時間又は労働日の賃金』を抑えられていれば、暗記していて解ける問題ではないですが、学習が進んでいる方なら今回の労基安衛の5肢の中では一番確信を持って、「B」=「⑪・通常の労働時間の賃金」が選べたと思います。
「C」は難しい肢でした。【割増賃金】と言うと、計算の基礎から除外される賃金(労基則21条)として、≪ 通家別子1臨住 ≫ と言う7つの参入しない手当が浮かんでしまい、選択肢⑦に、家族手当・通勤手当~とあり、また、問題文も、~等にも留意して・・・となっているため、参入しない手当も意識する必要があるのか、と惑わされた受験者も多いのではないでしょうか。
 問題文中の(略)と(略)の間にある文章、”当該手当の名称や算定方法だけでなく”を手掛かりに、「⑭・当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け」を選ぶことが出来るかがポイントですが、ここは間違えても仕方ないでしょう。

「D」「E」は安衛法からで、「D」については安衛法62条【中高年齢者等についての配慮】の条文穴埋めでした。穴埋めされた箇所を暗記している方は少なかったと思いますが、ダミー肢との比較から「⑩・心身の条件」は選択できると思います。「⑧・希望する仕事」だと使用者が思う適正な配置になり得ない(労働者に危険が生じる)可能性が出てきますので選択肢からは外れます。
「E」は前年同様、安衛則からのマイナーな設置義務に関する部分で、これは実質、②・1.5メートルか③・2メートルの二択でカンで解くしかありません。前年が1.5メートルだっただけに引っ張られないように、平均身長より少し上からの墜落だと危ないなと思えれば③・2メートルを選べたと思います。

目標点数

「B」を取り、「A」「D」で上乗せして3点確保したい。拾えなかった場合は「E」を取って、足切り回避をしたいところ。

【問2】労働者災害補償保険法

解説

 珍しく法改正部分から出題されました。ただマイナーな法改正部分ではなく、【複数事業労働者】と言う、労災法の幹の部分が変わったことについての論点で、学習をスルーしていた受験生はまずいないのではないでしょうか。
 私の過去のブログ(出題予想・労災保険法)でも重要論点として取り上げていますし、各予備校も時間を割いて解説していたと思います。


 前年度試験は【通勤災害】の1テーマのみでしたが、今回は前述の法改正・給付通則・遺族補償年金とバランスの取れた作問だったと言えます。

各肢の解き方

「A」「B」は解説のとおり、法改正【複数事業労働者】からの出題でした。「A」については、被災した時点での期間は関係ないとわかれば、⑳を選択出来ると思います(正解文は長いので略します)。「B」も法改正部分とは言いながら、主たる事務所になるのは何が基準になるかを考えれば、通常は「お金」になることは想像できますから⑬を選ぶことが出来るでしょう。

「C」は基本中の基本でこれは絶対に落とせません。2019年の労災択一問1-Aで、
『年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始めるものとされている。』
と出題されており、今回は停止すべき事由に変わっただけです。
”~翌月から~月まで”と言う期間は支給も支給停止も変わらないので「⑩・その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月まで」となります。

「D」「E」は遺族補償年金からですが、「D」が各予備校でも解答速報が出たときに割れていました。
⑤・55と⑥・60の両方とも正解と言えそうです。予備校テキストでも55歳以上の部分が赤く色塗りされていて、60歳まで支給停止の部分がかっこ書きで小さく書かれていると 、⑤・55でも正解になりそうですが、労災法16条の2を参考にすると、一号、三号の部分(「D」の選択肢)では60歳以上となっていますし、二号、三号の部分(「E」の選択肢)では 18歳に達する日~となっており、55と言う数字は条文上出てきません。
「受給権者」のことを問われれば55歳を選んでも良さそうですが、「遺族補償年金を受けることができる遺族」のことを今回は法16条の2をベースに聞かれた問いだとすると「D」は、⑥・60のみが正解となると思います。「E」は前述のとおり、③・18です。

目標点数

「C」は絶対、「A」「B」も取っておきたい。「D」は難しいが、「E」も取れそう。
3点、出来れば4点確保したい。

【問3】雇用保険法

解説

 求職者給付の中から、【算定対象期間】【就職への努力】の部分が論点となりました。数字部分に関しては基本的な内容かも知れませんが、問われ方が間違いを誘いやすくしています。
「D」も行政手引からとは言え、予備校のテキストには掲載されている内容と思いますので、読み込みをしていれば解きやすかったかも知れません。
 四択とは言え、少し難しい内容だったと言えます(とは言え、前年も二十択で、上から4つずつ区切るような形で実質四択でしたが。。。)。

各肢の解き方

「A」は【算定対象期間】からの出題で、原則として離職の日以前2年間、特定理由離職者及び特定受給資格者に該当すれば離職の日1年間となり、①・1年間が正解肢となりますが、かっこ書きで2年間又は「A」と言う聞かれ方をしているので、何を問うてるのかピンと来ない文になっています。それに惑わされずに原則的なことを聞かれてると頭を整理させて ①・1年間 を選びたいところです。
「B」は過去にも選択式で抜かれているところですし、きっちり④・30を選びたいです。
「C」についても「A」と同類の考え方(原則からの例外)で、原則は「求職活動の実績が2回以上」、例外として問題文にもあるように、就職が困難な者などについては「1回以上」で足りることになるので①・1になります。
「D」は【求職活動の範囲】が論点ですが、②と③で迷うかもしれません。ただ、行政手引きにより単なる職業紹介機関への登録では求職活動実績には該当しません。受け身な活動ではなく、求職者自身が一番行動的になっているのはどれかを考えられれば正解肢の「②・求人への応募書類の郵送」を選べたかも知れません。
「E」は消去法で正解肢を導くことになるでしょう。結局、失業の認定は労基や労働局、年金事務所ではないだろうと踏んで、聞きなれない「①・巡回職業相談所」を勇気を持って選べたかどうかだと思います。

目標点数

「B」は取りたい。「A」も取っておきたい。「C」は就職活動経験者はまさに経験上知っていたかも。
「B」で1点、「A」か「C」で1点、「D」か「E」で1点で3点確保したい。

救済の可能性について

 今回確認した3科目(労安・労災・雇用)ですが、一番可能性があるのは労安だと思います。ただしあるかなしかの二択で問われると、労安でも「なし」になる気がします。
 前年度の労安では暗記をしていて点を取りやすい肢が2つ(AとD)存在しましたが、今年度は0と言えます。しかし、2点以下の割合は救済(補正)基準の50%を超えそうですが、1点以下の割合が30%を超えるかどうかが微妙です(前年度は1点割合以下が13.3%)。
 以前は労働一般常識(労一)が 救済(補正)基準にかかりそうでかからない科目でしたが、前年度に引き続き、労安が3点確保必須となりそうで、来年度以降も、”午前・選択・問1・労安”が鬼門の科目になっていきそうな気配です。

この合格予想基準は、管理人独自の見解です。合格ラインや救済科目についてのお問い合わせ等は承っておりませんので、ご了承ください

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