【問1】労働基準法・労働安全衛生法
解説
前年、前々年に引き続き、問Aは条文ベース、問B,Cは最高裁判例から、問D,Eは安衛法の条文ベースからの出題でした。この傾向が労基安衛法の出題基本パターンとして定着されるでしょう。
各肢の解き方
問Aは時効の問題でした。労働基準法115条において、直近の法改正として『賃金請求権についての消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年とする』と言う変更が2020年4月1日以降に適用されていますが、問題文にも丁寧に”(賃金の請求権を除く)”とありますので、①の2が正解となります。退職手当の時効が5年でそれ以外が2年との原則を抑えていれば正解できる問題でした。
問BとCが別々の判例問題として独立しており、昨年は同じ判例から2題出されていることを考えると今年の方が解きやすくなっていると思います。
Bは文脈から考えたり、20ある選択肢を見てみても⑯の遅滞なくしか選べない気がします。Cについては、⑰と迷いそうな感じですが、別の判例として【大星ビル管理事件】と言うのがあり、そこでも⑳の【労働からの解放】がキーワードとなっています。
判例は丸暗記するものではないので、判例の読み慣れが必要です。今回出題の判例は【大林ファシリティーズ事件】と言うものですが、学習方法として、労基法の労働時間の部分を勉強する。→関連の判例文を見る。→気になるキーワードをチェックする。と言った流れでインプットし、過去問や予想問題でアウトプットする習慣を身に着けるとよいでしょう。
問Dは重量表示、問Eは病者の就業禁止について問われました。重量表示については、平成24年の択一式、問10ーEで出題されており、1トン(⑦)の部分を0.5トンに変えて、誤りとして出されていたため、正解しやすかったと思います。問Eはコロナ関連と言えばコロナ関連・・・そういった類の部分からの出題でした。条文をチェックしていなくても、コロナウィルスについての社会の対応からして”仕事を休ませる”ことがイメージできれば、勧奨とか支援ではなく、⑮の、その就業を禁止を選べたと思います。
目標点数
【問2】労働者災害補償保険法
解説
問A,B,Cが休業補償給付から、問D,Eが社会復帰促進等事業からの出題でした。全肢とも基本的な箇所ばかりで満点を取れている受験生は多いと思います。
各肢の解き方
問A,B,Cは全て基本中の基本の論点でした。迷わずに⑲療養・⑦4・②100分の60をそれぞれ入れたいところです。
問D,Eの論点は、私が令和元年に受験した時、予想問題として各予備校がこぞって出してきたところです。当時私が使用していたテキストを見返すと今回の問D、健康診断(⑩)の部分は、資格の大原がピンポイントで出題していましたし、ide社労士塾もこの部分を出していました。他の選択肢を見ても除外しやすい肢も多いため、Eの⑭賃金も選びやすかったと思います。
目標点数
【問3】雇用保険法
解説
技能習得手当(問A,B)、日雇労働求職者給付金関連(問C,D)、基本手当の受給期間の延長(問E)と3つの論点が出題されました。
各肢の解き方
問Aは基本中の基本で、技能習得手当の種類(受講手当と、今回の正解肢、⑳通所手当)を問う問題で必ず正解したいところ。問Bは受講手当側からの出題で、【40日分を限度として日額500円支給される。】の日にち部分、⑥40日も基本的な内容からでした。
問Cは平成17年の選択式(雇用保険法・E)で出題実績があるため、⑯の通算して26日を正解したいところ。問Dは、日雇労働求職者給付金の特例給付の支給日数が論点で、論点そのものはマイナーですが、特例給付の支給要件は過去に出題されており、その発展としておさえていた方も多いと思います。選択肢の記載順(配置)として、⑧の60日に目線が行きがちですが、慌てず⑲の”通算して60日”を選びたいところです。
問Eは昨年もあった事例問題ですが、今回の問題はハローワークの担当者(実務)レベルと言ってよく、解けなくても問題ないと思います。
要は、求職の申し込みをしないと希望した期間が6か月(退職日が3月末日のため、9月末日まで)で、疾病期間が3か月(8月1日~10月31日)のうち、求職の申し込みをしないと希望した期間とかぶっている場合(今回の例では9月1日~10月31日の2か月分)は二重で加算しないと言う行政手引上のルールにより、答えは③の10月31日となりますが、ここはいたずらに時間を費やすことなく、問A~C(+D)が自信をもって正解出来ていることを見込んで、感覚(カン)でマークシートを埋めてしまっても良かったと思います。
目標点数
救済の可能性について
今回の3科目については、3点以上は確実に取れる問題構成だったように思います。1個のミスで4点だったのが一気に2点まで下がってしまうような心配もありませんでした。
こういう時にいわゆる”誰得救済”になりがちなのが「雇用保険法」ですが、感覚的に「A」は初学者でも取ってきそうですし、「B」や「C」についてもどちらかは解答できた方は十分にいそうで、トータル2点以上の受験生は多いとみています。
以上のことから、今年の3科目(労基、安衛・労災・雇用)については救済がかかる可能性は低いと考えられます。