退職日が3月31日(月末)と3月30日(月末より1日前)では各種社会保険の加入期間(被保険者期間)が異なるため、通常、給与から天引き(徴収)される額が異なります。
手取りで見た場合、どれくらい変わるかは、当然ですが基本手当や従業員の年齢によって変わります。そのため、一概に答えは出せませんが、ここではひとつのモデルケースを知り合いの税理士事務所様に作成してもらいました。
手取りの差額を下記モデルケースで試算してみました。
・ 従業員年齢:50歳
・ 協会けんぽ大阪支部(社会保険)に加入
・ 基本給:30万円 / 交通費:全額会社負担 / 残業時間等:退職月は無し
・ 月末締め、翌月10日払い
※ 住民税は特別徴収の継続により4~6月の3か月分を一括徴収している。
上記モデルケースの社員が3月30日で退職した場合
上記モデルケースの社員が3月31日で退職した場合
モデルケースにおける差額は・・・
月末退職の手取り(¥254,220)と月末1日前の手取り(¥298,090)では約¥44,000程の差が出来ることがわかりました。
月末より1日前、即ち月半ばの退職になると、社会保険の資格喪失月は前月となるため、健康保険と厚生年金の天引きがなくなりますので、その分退職月の手取り額が増える結果となります。
当然ですが、手取り額が増えたからと言っても、空白期間を作らずに再就職、もしくは扶養に入るなどのアクションがない限りは、退職月となる3月に関しては国民健康保険の保険料が発生しますし、国民年金保険料(令和4年度は¥16,590)も必要になります。
手取りが増えるからあえて月末退職を行わない、と言う選択肢もなくはないですが、結果的には別の形で徴収されるパターンとなるケースが多いので、安易に手取りの額だけを見て決めない方が良いと思います。
このテーマに関連した社労士過去問
平成19年 健康保険法 問6ーA
被保険者の保険料は月を単位として徴収され、資格取得日が月の最終日であってもその月分の保険料は徴収され、資格喪失日が月の最終日であっても原則としてその月分の保険料は徴収されない。
解答解説
〇
保険料は月を単位として徴収される。
資格を喪失した場合、原則としてその月分の保険料は算定されない。
平成22年 健康保険法 問8ーD
被保険者は、①死亡したとき、②事業所に使用されなくなったとき、③適用除外に該当するに至ったとき、④任意適用事業所の任意適用の取消しの認可があったとき、以上のいずれかに該当するに至った日の翌日から、被保険者の資格を喪失する。
その事実があった日に更に被保険者に該当するに至ったときも同様である。
解答解説
×
その事実があった日に更に被保険者の資格を取得した時は、「翌日」ではなく、「その日」に資格を喪失する。なお、前段は正しい。
令和元年 健康保険法 問10ーC
給与計算の締切り日が毎月15日であって、その支払日が当該月の25日である場合、7月30日で退職し、被保険者資格を喪失した者の保険料は7月分まで生じ、8月25日支払いの給与(7月16日から7月30日までの期間に係るもの)まで保険料を控除する。
解答解説
×
健康保険法156条3項より、「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない」となっていて、この問いの場合、7月30日で退職していることから、その翌日である7月31日に被保険者資格を喪失するため、7月分の保険料は算定されず、保険料は6月分まで生じ、7月25日支払いの給与まで保険料を控除することとなり誤りの肢となる。
平成20年 厚生年金保険法 問2ーE
平成20年4月30日に適用事業所に使用され、平成20年5月31日に当該適用事業所に使用されなくなった厚生年金保険の被保険者(70歳未満であり、退職後は国民年金の第1号被保険者となるものとする。)の保険料は、4月分と5月分の2か月分が徴収される。
解答解説
〇
資格喪失日は、平成20年5月31日の翌日(平成20年6月1日)となるため、被保険者期間は、4月(資格を取得した月)から5月(資格を喪失した月の前月)の2ヶ月となる。
平成24年 厚生年金保険法 問4ーE
厚生年金保険の保険料は、月末に被保険者の資格を取得した月は当該月の保険料が徴収されるが、月の末日付けで退職したときは、退職した日が属する月分の保険料は徴収されない。
解答解説
×
月の末日付けで退職したときは、翌月1日が資格喪失日であり、退職した日が属する月分の保険料は徴収される。
平成28年 厚生年金保険法 問9ーE
適用事業所に平成28年3月1日に採用され、第1号厚生年金被保険者の資格を取得した者が同年3月20日付けで退職し、その翌日に被保険者資格を喪失し国民年金の第1号被保険者となった。その後、この者は同年4月1日に再度第1号厚生年金被保険者となった。この場合、同年3月分については、厚生年金保険における被保険者期間に算入されない。
解答解説
〇 (同月得喪の例外)
「同一の月において、2回以上被保険者の種別に変更があったときは、その月は最後の種別の被保険者であった月とみなされる。」と言う規定があり、この問いの場合、3月分については、当該月末時点で国民年金の被保険者の資格を取得しており、厚生年金保険における被保険者期間に算入されない。
従業員目線から見た注意点
退職した後、稀にあるのが、月末退職と認識していたにも関わらず、会社側が資格喪失日を翌月1日ではなく、故意に月末日とし厚生年金保険料は天引き徴収しているにも関わらず厚生年金保険等の未加入期間としてしまうことです。
退職を予定している方や転職をされている方については、定期的にご自身の年金記録を「ねんきんネット」等を使って確認してみることをお勧めします。