概要・用語の定義
令和3年1月1日以降、はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師が、療養費の受領委任を取り扱う「施術管理者」として新たに申し出する場合、「実務経験」と「研修の受講」が必要となりました。
また、過去に施術管理者の経験がある方も、令和3年1月1日以降、新たに申し出する場合は、「研修の受講」が必要です。
例えば、鍼灸師を雇ってすぐ鍼灸院を開業したい、もしくは直近で鍼灸師が退職したので、別の鍼灸師を施術管理者として採用して経営のブランクを作らないようにしたい。と言った場合は事前の面接等で、「実務経験」と「研修の受講」の有無を尋ねておく必要があります。開設者や経営者は必須知識項目の通知内容となります。
「施術管理者」とは
「施術管理者」とは、平成31年(2019年)1月1日より、鍼灸・マッサージについても、柔道整復と同様の受領委任の取り扱いが始まっている制度の中で呼ばれている、いわゆる”地位”みたいなものです。
あはき師本人の名前で厚生局と受領委任契約を結び、契約番号を取得して開業すれば、その人が「施術管理者」と呼ばれることになります。これは資格者本人が開設(開業)していようが、雇われている状態であろうが関係ありません。あくまで厚生局と受領委任契約を結んでいるかどうかがポイントなります。結ばれていれば、都道府県に応じた番号を取得することになります。
この『番号通知書』を持っていれば(登録記号番号を取得していれば)、施術所での勤務経験が1年未満(半年でも、極端な話1日)でも『「実務経験」を有している人』となります。
※ 詳細は下記のケース2番目を参照してください。
「研修の受講」とは
柔道整復の側ではすでに行われていますが、新規開業するにあたり、鍼灸・マッサージに関しても『新たに療養費の受領委任を取り扱う施術管理者が、適切に療養費の支給申請を行うとともに、質の高い施術を提供できるようにすることを目的』に下記内容で研修の受講が必須となりました。
・研修の時間 16時間、2日間以上
・研修の内容(1)職業倫理
(2)適切な保険請求
(3)適切な施術所管理
(4)安全な臨床
当ブログ執筆現在は、公益財団法人東洋療法研修試験財団が研修実施機関を担っています。
「実務経験」とは
施術者の資格取得後、はり、きゅう又はあん摩マッサージ指圧でそれぞれ1年間の期間、実務に従事した場合、要件となる「実務経験」を満たすことになります。
過去の職歴ケース(こんな場合、実務経験要件を満たしているのか。)
令和3年1月以降、すでに鍼灸・マッサージの資格を得ている人が新規開業を考える場合、自分自身が「実務経験」要件を満たしているか気になるところです。
ここでは各ケースから実務経験を満たしているか検証していきます。
デイサービスに10年勤務していた場合(それ以外の経験はなし)
「実務経験」としてカウントされるのは、施設の形態が「施術所」である場合に限られます。「施術所」の定義は下記の通りになります。
よって、施設形態がデイサービス事業所であったり、有料老人ホームの場合は、そこに何年勤務していても「実務経験」を有することにはなりませんので、令和3年1月1日以降、新規開業する場合は「実務経験」を施術所で積んでから、と言うことになります。
鍼灸院に半年、病院にリハビリ業務として2年勤めている場合
前述のケースのように、病院・リハビリ業務は実務経験とカウントしませんので、「鍼灸院に半年」と言う実務経験の部分を見ます。
半年だから要件を満たしていない。と一概には言えません。鍼灸師として、鍼灸院に勤めていたのが「施術管理者」として働いているかどうかで考えます。
もし、平成31(2019)年1月1日以降、厚生局に施術管理者として届け出をし、受領委任契約番号をもらっていれば、その方は「実務経験の要件を満たしている人」となります。
この場合、実務経験を証明する提出書類は、前述の厚生局から送付される「番号通知書」のみで足ります(近畿厚生局指導監査課に確認済)。通知書が手元にない場合は実務経験証明書にて”自分で自分を証明する”形となります。
「施術管理者」としての勤務経験がない場合は、実務経験を1年間有する必要が出てきます。そのため、当ケース(=「施術管理者」としての勤務経験がなく、かつ実務経験が半年)の場合は即開業の条件を満たしていません。
「施術所」に1年以上勤務していた
この場合、「実務経験」の要件は満たしています。あとはどのように証明するかになります。
まず、勤務していた鍼灸・マッサージ院が受領委任契約を結んでいるか否かを見ます。受領委任契約を結んでいる院で勤務していた場合(平成31(2019)年1月1日以降の勤務が条件)は、「実務研修期間証明書」に、当該院の開設者もしくは施術管理者から証明をもらいます。
受領委任契約を結んでいない院の場合、もしくは平成31(2019)年1月1日より前に鍼灸・マッサージ院で働いていた場合については、「実務研修期間証明書」に、当該院の開設者から証明をもらいます。また、開業の際には保健所への開設届の写しを厚生局に提出する必要があります。
開設者もしくは施術管理者からの証明をもらうことが出来ない場合
新規開業する本人が、過去「施術管理者」ではなかった場合、実務経験を証明する人は原則、開設者もしくは施術管理者となります。そして、当ブログ執筆現在では、証明をもらえない場合の代替案等の疑義解釈資料は出ておりません。
そのため、実務経験証明書が作成できない場合は新規開業不可と考えられますが、施術所で勤務していたことを証明できる資料(雇用契約書、給料明細、タイムカードのコピー、源泉徴収票等)があれば、保管できている資料で実務経験証明書の代替になるかどうかを開業する都道府県の厚生局に問い合わせをすれば、例外的に開業が認められるケースもありますので問い合わせをしてみるのも良いかもしれません。
かなり前に1年以上、自分1人で開業(資格者も自分のみ)していた場合
実務経験の証明は原則、第三者が証明をするものですが、例外的に「本通知による施術管理者の要件の取り扱いを実施するまでの期間(=令和3年1月1日より前)」であれば、”自分で自分を証明する”ことが可能です。
施術管理者の要件の特例
現在学生の方は、下記のような条件で「実務経験1年」と言う条件が、7日(49時間程度)で要件を満たすこととなる特例が令和7年度まで決定しています。
【特例要件を簡易的にまとめると・・・】
・ 卒業年の国家試験に合格
・ 学校を卒業
・ 卒業年の5月末までに施術管理者の届け出をする。
→ 実務経験7日(49時間程度)で要件を満たす。
※ ただし、実務経験を証明してもらうための「施術所」は、
・ 保健所へ開設を届け出た施術所であること(受領委任取扱いを承諾されていない施術所も対象)。
・ 研修実施の施術所において継続して1年以上実務に従事している施術者からの証明が必要。また、保健所へ施術者として届出されていること。
・ 現在若しくは過去において行政処分を受けていないこと。
の3つの条件を満たしている必要があります。